マフザ・マハムードさん(Ms.Mahfuzah Mahmud)

1999年4月にマラヤ大学予備教育部日本特別コース(AAJ)入学(第18期生)。2001年4月に大 分大学工学部に入学、知能情報システムを学ぶ。マレーシアに帰国後、東芝エレクトロニクス・マレーシア社( Toshiba Electronics Malaysia Sdn. Bhd. )での勤務を経て、2007年4月からAAJで日本語を教える。

マフザさんがAAJで教えることになったきっかけは何ですか?


(大学の友人とそのご家族と一緒に)

子供の頃から先生になるのが夢でした。でも何の先生になるかは決めていませんでした。日本に留学して、日本語がますます好きになり、大 学2年生頃から日本語の先生になりたいと思い始めました。

AAJでは、日本語を教えるだけではなく、日本の大学で工学を学ぶことのたいへんさを伝えたいと思います。これから日本に行く学生が、 そのたいへんさを乗り越えるうえで何か役に立てるよう、自分の日本での留学体験を学生と分け合いたいと思っています。

なぜ日本への留学を選びましたか?

高校生の時は、日本への留学など考えたことがありませんでした。でも、日本のドラマをよく見ていたので、日本は好きでした。SPM (Malaysian Certificate of Examination:後期中等教育修了時に受ける試験)の結果を受けてマレーシア人事院から「留学プログラムに申し込むことができる。行き先は日本か ドイツ」というオファーがあり、それじゃあ日本に行こう!と決めました。

日本語は、勉強してみて難しいと思いました。でもとても面白かったです。話せるようになったら、勉強するのがとても楽しくなり、日本語 が大好きになりました。

AAJで勉強していた時は、先生がくれた教材をこなすのがやっとでした。でも日本に留学していた時は、生きた日本語を教材として勉強す るのがとても楽しかったです。生きた日本語の教材とは、私の場合はテレビ番組でした(笑)。家に帰るとすぐにテレビをつけたものです。『笑っていいと も!』や『学校へ行こう!』、『ザ!鉄腕!Dash!!』などの番組が特に好きでした。

日本語のどのような点が好きですか?

日本語のソフトなところ、丁寧なところが、とても好きです。日本語は、丁寧な言い回しやカジュアルな言い回しがいろいろありますが、全 体的にソフトな印象があります。「〜ね」という言い回しが多く、とてもやさしく聞こえます。マレーシア人の先生と会話する時に、日本語で会話するのとマ レー語で会話するのとでは、相手に対して感じる印象が違います。

それから日本語には、マレー語に翻訳できない表現がたくさんあるように思います。それもとても面白いです。たとえば「がんばって」とい う表現。日本語では、試験でも、競走でも、なんでも「がんばって」という表現一つで済みます。でもマレー語では、「もっと早く走って!」とか、「試験でい い点数が取れるといいね!」とか、言い回しが状況によって異なります。それから「お疲れさま」という言葉も好きです。他人の努力に感謝するという気持ちが こもっていて、よい言葉だと思います。

後輩に一言。

自分の学生も含め後輩たちに一番伝えたいことは、自分の好きなことをしっかり見つけて、それをやり遂げて欲しいということです。そうし ないと後悔します。

実は…工学はあまり好きではありませんでした。日本に行きたかったので、工学を勉強したという部分がありました。でも工学を勉強するこ とに、あまり満足感を得られませんでした。AAJから日本の大学に進む時に、工学部以外の学部に進む選択肢もありえるかとJPAに聞いてみたのですが、工 学部でなければダメだという回答でした。

大学では、自分の好きなことを見定めて、それに打ち込んでいる友人たちと出会いました。その人たちをすごいなと思ったし、うらやましい なと思いました。その友達を見て、私も卒業後は絶対に自分の好きな「道」に歩いて行こうと決心しました。今の仕事は工学と関係ありませんが、学生に日本語 を教えるだけでなく、学生たちに私の学部生時代のいろいろな経験を伝え、それを分け合うこともできるので、後悔することは全くありません。


(AAJの学生たち)

今は、自分の好きなことを見つけて、それに熱心に打ち込んでいるようですね。

はい。今は毎日楽しいです。AAJの学生は全国から選ばれた学生なので、学業においても人間的にも優秀な学生が多く、個性も豊かである と感じます。彼らは私の授業のやり方について、よいアイデアをたくさん提案してくれます。そうした学生とのコミュニケーションはとても楽しいし、ためにな ります。日本語ももっと勉強したいし、日本語を教える技術ももっと身につけたいです。今はそれに夢中です。

では、今あるご自身に対する自信も踏まえて、改めて最後に一言お願いします。

まず学生のみんなに対して。私も日本語は難しいと思いました。特に漢字を覚えるのはたいへんでした。でも2年間終わって話せるように なったら、日本語のおもしろさに気づくはずです。日本では、大学を卒業するためだけでなく、日本のことを理解するようがんばって勉強して欲しいです。

日本人や他の国からきた留学生と仲良くして、お互いに異文化を理解すると将来とても役に立ちます。そして、その間に自分がやりたいこと をちゃんと見つけて、卒業後それぞれの「道」で日本で留学した経験を生かしましょう。チャンスは一回しかないので、しっかり頑張ってください。

日本の皆様には、心から本当に感謝を申し上げたいと思います。日本で留学した時、辛かった時期もありましたが、先生方や友達のおかげで やっとそれを乗り越えて、卒業できました。皆さんと出会って、たくさんのいい思い出もできたし、死ぬまで忘れられない「宝物」です。本当にありがとうござ いました。そして、これからもマレーシアの学生にいろいろと教えてくださいとお願いしたいです。周囲の先生方や友人の親切さがないと、彼らが卒業までたど り着くのは難しいです。どうぞよろしくお願いします。

(AAJの学生や先生たちと一緒に)

(インタビュー日:2009年2月5日)