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10月11日、堀江正彦大使はマレーシア着任後初めて当地の報道関係者を公邸に招いて記者会見を行いました。その際の堀江大使のメッセージを以下の通り紹 介いたします。


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1. カタールとマレーシアとの共通点


私は過去3年間、カタールで勤務し、10日前(9月29日)にマレーシアに着任しました。カタールとマレーシアには、(1)イスラム教国でも経済的に成 功、(2)人々が友好的、(3)多文化的、(4)天然資源が豊富、(5)教育の重視、などの共通点があります。
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エネルギー資源に関しては、両国とも天然ガスや石油などが豊富です。日本はカタールから液化ガスを600-700万トン輸入しており、それは日本の液化ガ ス輸入量の10−12%にあたります。マレーシアから日本への液化ガスの輸入はその倍で、1200−1300万トンを輸入しており、日本における液化ガス 輸入量の20%を占めています。マレーシアは私の知る限りでは液体燃料(GTL)を生産した最初の国ですが、カタールではシェルやサソールの参入により GTLの生産開発が目覚しく、GTLの生産ではマレーシアを追い抜くのではないかと思います。

カタールは世界で最も富裕な国であり、1人当たりの国民所得は6万米ドルを越えました。カタールの指導者たちは、カタールの将来が教育にかかっていると認 識しています。教育と人材開発の重要性は、マレーシアにおいてもその歴史の中に根付いてきました。そのためマレーシアは経済発展を遂げ、いわゆるマレーシ ア・ミラクルを実現しました。

カタールでは、首長から日本語で日本式の教育を行う「ジャパン・スクール」を設立するよう要請を受けました。2006年9月にドーハのアル・バヤン・ス クールでは、日本語を学ぼうという生徒は48人でしたが、3ヶ月で164人まで増加しました。マレーシアでは日本方式で教育を行うマレーシア日本国際工科 大学(MJIUT)の計画が進んでいます。カタールでは小中学校で、マレーシアでは高等教育という違いはありますが、教育を重視しているという点では共通 です。

ドーハにはアルジャジーラの本部があり、アラビア語およびイスラム教国の大部分がアルジャジーラを視聴しており、その数は5000万人に上ります。アル ジャジーラはイスラム社会への窓口となっています。マレーシアにはアルジャジーラ・インターナショナルがあります。アルジャジーラは言論の自由を体現して います。


2. マレーシアの印象

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マレーシアは国土が広く、自然や観光資源が豊かで、カタールよりも良い条件にあります。マレーシアはまさに「Truly Asia」だと思います。年間35万人の日本人がマレーシアを訪れるのも理解できます。

こ のタイミングにマレーシアに赴任できて嬉しく思います。なぜなら今年は、マレーシア独立50周年にあたり、また日馬外交関係開設50周年にあたるほか、福 田ドクトリン30周年等様々な記念の年に当たるからです。1977年に当時の総理がアジアおよびアセアン、特にアセアン重視に関する政策を打ち出すスピー チを行いました。また今年は東方政策25周年にも当たります。東方政策はマハティール前首相によって開始され、すでに四半世紀の歴史を持ちます。その間に 1万1000人が日本で留学・研修を行いました。またこれ以外にも日本に留学したマレーシア人は大勢います。日本に留学したマレーシア人の総数はおそらく 先ほどの数字の2倍はいるでしょう。


またJICAは1万4,000−1万2,000人を、AOTS((財)海外技術者研修協会)は7,000人を日本に派遣して研修プログラムを行ってきまし た。こうした人的交流が、日本とマレーシア関係の基礎になっており、両国間の関係を強化してきました。

私がマレーシアに最初に来たのは1983年で、当時の中曽根総理がマレーシアを公式訪問した際、ODA担当官として同行しました。当時はポートクランなど 各地で水力発電所のプロジェクトが導入されたほか、人材育成のための研修センター・プロジェクトが開始されました。この頃のマレーシアと日本の関係は、 「支援する側とされる側」の関係でした。しかし今日、マレーシアはすでに経済発展を遂げ、成熟した国となりました。これからのマレーシアと日本の関係は、 「対等なパートナーシップ」に基づくものであり、そのパートナーシップを通じて地域と世界の和平・安定のために両国が貢献していけるものと期待していま す。

3. 抱負

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(1)経済関係の拡大
現在マレーシアには日系企業約1400社が存在しており、在留邦人数は約1万人です。日本とマレーシアの経済提携は、経済連携協定(EPA)の締結によっ て新たな段階に入りました。EPAは将来の二国間の経済において非常に重要です。EPAの締結によって貿易量の97%が無関税となるため、両国間の貿易は 拡大するでしょう。日本の対マレーシア直接投資も増加することが期待されます。両国はビジネス環境の一層の改善に共に努めていく必要があります。産業提携 の好例として、プロドゥア社のMyviをあげることができます。プロドゥア社は49%が日本資本で、51%がマレーシア資本であり、Myviのデザインや 技術は日本とマレーシアの共同製作です。これはたいへん素晴らしいことです。また経済がグローバル化する中で、Myviの部品の現地調達率は80%であ り、これも注目すべきことです。

(2)日馬関係の新たな地平線に向けて
援助国・被援助国の関係とは異なるパートナーシップの関係を、以下の新たな分野において構築していくことが、日本・マレーシア関係の新たな地平線を開拓す ることであると考えます。両国の協力関係は、経済的な協力に留まらず、政治・安全保障にも及びつつあります。

@地域統合
地域統合において、ASEANの統合は重要です。日ASEAN対話、ASEAN+3、ASEAN+6、東アジアサミット、ASEAN地域フォーラムなど、 ASEANを中心とした様々なフォーラムが進展しています。ASEANの統合の進展は、地域の安定に繋がるものであり、日本はこれらの試みを支援していま す。
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A和平構築
マ レーシアはスーダン、コンゴ、西サハラ、レバノン、ミンダナオなどのPKOに500人近い兵士・警官を派遣しています。特にミンダナオの和平構築は ASEANおよびアジアにとって重要であり、この課題に対してマレーシアは主導的な役割を担っています。日本はJICAの専門家をミンダナオに派遣し、ミ ンダナオにおけるネーション・ビルディングと和平構築に支援を行っています。

B海上安全・テロ対策
カタールやサウジアラビア、UAEからの天然ガスや石油タンカーはマラッカ海峡を通過します。マラッカ海峡の安全は日マ両国のみならずASEAN諸国に とっても生命線です。ASEAN諸国は安全確保のための対策を講じており、日本もそれに協力しています。9月にクアラルンプールで、日ASEANテロ対策 対話が行われたことに示されているように、東南アジア地域におけるテロ対策にも日本は積極的に協力しています。


C他地域との日・マレーシアの経験の共有
マ レーシアの経済発展の経験を他地域と、例えばアフリカ諸国などと共有していくべきです。フランスで公使を務めていた時、マレーシアとフランスの森林保全の 専門家と協力して、マダガスカルの森林保全事業を立ち上げる努力をしました。また、日本とマレーシアとの間でMalaysia Technical Cooperation Program(MTCP)が進展しています。MTCPの第三国研修は日本とマレーシアが協力して、ASEAN諸国、なかでもカンボジア、ミャンマー、ベ トナム、ラオスに対して、またアフリカ諸国に対して10種類の研修コースを提供するプログラムです。両国はプロジェクトにかかる資金を折半しており、この プログラムが対等なパートナーシップのうえに成り立っていることを示しています。

地球規模の気候変動や二酸化炭素ガスの削減という問題もあります。1980年代の日本は公害がひどく、川の魚は死に、光化学スモッグが頻繁に発生し、子供 たちが外で遊べなくなりました。日本にはそれを克服した経験があるため、公害対策の技術において主導的役割を担うことができます。さらに日本とマレーシア は、バイオ燃料の開発や、二酸化炭素ガスの半減、森林保全のための生物多様性の維持などにおいて協力し合うことができます。


4. まとめ

日本とマレーシアの「新たな地平線」とは、対等な協力関係を通じた地域・世界への貢献です。国連によるPKOへの協力も重要です。またそれとは別の枠組 み・領域においても、両国のパートナーシップで貢献していけることが数多くあります。

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