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海外安全対策情報(平成28年1月〜3月)

【1.治安情勢概説】
 (1)  最近の動向
        マレーシア国内では、1月14日にインドネシア・ジャカルタ市で発生したテロ事件を踏まえ、マレーシア国家警察長官が「最高レベルの警戒態勢 を取る」と述べて国内主要施設や観光地等における軍警合同パトロールを実施するとともに、全国各地でテロ容疑者の摘発を強力に推進しています。
      一方、一般治安情勢は、2015年の犯罪発生認知件数が12万件以下に減少し、治安当局がその成果を自賛する一方、住民レベルでは「ひったくりや置き引 き・強盗等の犯罪は減少していない」と漏らす者が少なくないなど、必ずしも体感治安の改善には繋がっているとは言いがたい状況が認められます。
     1月から3月にかけて在留邦人及び短期滞在者が遭遇した事案としては、在留邦人に対するひったくり事件(白昼のショッピングモール出入口で発 生クアラルンプール日本人会の直近で発生、1月中旬)や、邦人旅行者に対するひったくり事件(白昼、クアラルンプール市内中心部の交差点で発生、3月上 旬)置き引き事件(KLCCにて夕食中に貴重品の入った鞄を盗難、3月中旬)などがあります。

 (2)  犯罪認知件数と犯罪発生傾向
   マレーシア国内の2015年中の犯罪発生認知件数(除く知能犯罪、薬物犯罪等)は、115,545件(前年比マイナス13,025件)と大幅に減少しました。
   しかし、犯罪発生率を日本と比べると、当地の犯罪発生率は日本の約2倍、また、強盗事件の発生率は日本の約23倍と、身体や生命の安全を脅かしかねない犯罪が日本より遙かに高い割合で発生しています。

 (3)  テロ情勢
   当地では、これまで銃乱射事件や爆弾事件といったテロ事案は発生していません。
       しかし、1月15日にはクアラルンプール市内で「自爆テロを企図していた」とされる男性が逮捕されました。この被疑者は、逮捕された際にナイ フを携帯していたと報じられており、同人が大規模商業施設や観光地など人が多数集まる場所で刃物を使用した無差別殺傷事案を起こす可能性があったことがう かがわれます。
       上述のとおりマレーシア国家警察長官は、1月以降、最高レベルの警戒措置を取るべく、国内主要交通機関や大規模商業施設、観光地等における警察・軍による共同パトロールや検問などの警備措置を実施中です。
   一方、2月中旬には、当地英国及び豪州大使館が、旅行者向けに発出している渡航情報の中でマレーシアのテロ脅威度を引き上げたり、欧米の観光客が多数集まる場所や地域での警戒を呼び掛ける注意喚起を発出しています。
      このため、当地に滞在される皆様には「テロ事件の脅威が身近に存在する」ことを常に意識しながら、「もしテロ事件が発生したら、どのように行動すれば身の 安全を確保することが出来るか」ということを考えながら行動することが求められています。

 (4)  邦人の皆様へのお願い
     在留邦人及び邦人旅行者の皆様におかれては、外国では言語、法制度、警察組織や犯罪捜査手続など、あらゆる事象が日本と異なること、また、万が一犯罪に巻き込まれた場合でも、日本の警察が行うようなきめの細かい対応は期待できないことをよくご理解下さい。
         その上で、「犯罪に巻き込まれない」ように注意すること、また、万一犯罪に巻き込まれた場合でも、「身体の安全を第一に行動すること」が出来るよう、心の準備と必要な安全対策を講じて下さい。
       併せて、空港や駅などの交通の要所や外国人観光客が多数集まる名所・旧跡、大規模商業施設では、外国人観光客を狙った銃乱射事件や爆弾テロ事件が発生し、被害に遭遇する可能性があることも念頭に置いて行動して下さい。



【2.一般犯罪・凶悪犯罪の事例・手口】
  ひったくり、置き引き、車上狙いなどの窃盗被害は、在留者や旅行者を問わず発生しています。10月以降に大使館に報告等寄せられた事案は、次のとおりです。

ア ひったくり(白昼のショッピングモール出入口でバッグを強奪)
      1月初旬の午後4時30分ころ、クアラルンプール市内中心部のショッピングモール出入口で、買い物帰りの在留邦人(女性)がバイクに乗車した男性に鞄を ひったくられる被害に遭いました。被害者は、バッグを強奪された弾みで転倒し、膝等を負傷しました。
       防犯カメラの映像には、被害直前に犯人が出入口で停車して襲撃しやすそうな買い物客を狙っている様子が映されていました。

イ ひったくり(白昼KL市内中心部の交差点でバッグを強奪)
     3月中旬の午後2時ころ、クアラルンプール市内中心部の交差点で信号待ちをしていた短期滞在者(女性)が、バイクに乗った男性二人組にバッグをひったくられる被害に遭いました。被害者は転倒時に肩等に打撲等の負傷を負いました。
      白昼のひったくり事案では、クアラルンプール市内で勤務する在留邦人(男性)が、同僚数人と昼食に赴いた際、スマートフォンに届いたメールを確認しながら 歩いていたところ、後方から走ってきた男性にスマートフォンを奪われ、そのまま逃走されたという事案も発生しています。

ウ 昏睡強盗(単身で飲酒中に気を失い車両で山中へ連行され財布等を強奪)
      3月初旬、クアラルンプール市内の日本人集住地区近辺で、一人で酒を飲んでいた在留邦人(男性)が急に気を失い、車両で山中へ連行された上、財布や携帯電話等を奪われる被害に遭いました。
   被害者は海外勤務の経験が長く、単身で飲酒する際にも携行品を放置しない等の用心をしていましたが、初めて入った飲食店で注文した飲み物を飲んだ直後から、記憶がなくなったということです。

エ 国際送金詐欺(いわゆる「ロマンス」詐欺など)
      国内外の「国際交流サイト」等で知り合った外国人にそそのかされ、マレーシアやその他の国々へ国際送金してしまう事案は、男女・年齢・季節を問わず多数発 生しています。本件詐欺は、当地欧米大使館でも多数の相談を受けていることを背景に、自国民に対して注意を呼び掛けています。
   典型的な犯罪 例は、架空の異性(男性の場合、欧米系白人で企業コンサルタント、米国軍人、バンカー等を名乗る事が多い)を名乗り、上述したサイト等で被害者を探して架 空のプロフィールに基づくメールを送り付け、数週間から2,3か月程度親しくメールを交換して被害者からの信用を獲得しようとします。
      そして、被害者から信用を得たとたん、様々な口実で数十万円程度の送金依頼を行い、被害者が応じると連絡を取らなくなるというものです。
       この種の犯行は、いわゆる「振り込め詐欺」と同様に組織的に行われており、相手方の他に税関職員や宅配業者等、巧妙に役割を分担して送金を促しています。
       また、一度送金すると更に高額の送金を要求することもあるため、金銭の貸借や建て替えを依頼するようなメールが届いたら、ただちに連絡を絶つといった厳しい態度で臨み、金銭の無心には一切応じないことが肝要です。

オ インターネット・オークション詐欺
       日本国内でネットショップやインターネット・オークションサイトに出品している邦人が、「品物を送付したが代金を支払ってもらえない」、「代金を支払ったのに商品が届かない」等の相談を多数寄せています。
       商品をだまし取られるケースでは、スマートフォンやデジタルカメラなどの電子機器、貴金属類など容易に換金できるものが狙われています。
   多くの手口では、犯人側は、高額な金額を提示して被害者との直接取引を持ち掛ける、あるいは海外の銀行を偽装した送金受付の文書や電子メールで被害者へ送金したと誤信させ、品物を送らせようとします。
   多くの場合、犯人はEMS(国際スピード郵便)で被害品をマレーシアへ送るよう要求し、EMSの配達状況追跡サービスを悪用して郵便局到着を見計らい、被害品を窓口で直接受け取り逃走している模様です。
   この配送先住所には居住事実がなく、受取時に提示する身分証明書も偽造身分証で人定が判明できないようにしていることがほとんどです。
     したがって、海外との取引に際し、殊更にオークションサイトを通さない直接取引を要求されたり、銀行口座への入金確認前にも関わらず、あれこれ理由を付け て「直ちに送って欲しい」等の依頼を受ける場合は、ただちに取引を中止するとともに、「これ以上取引を継続する意思はない、必要等あれば警察に相談する」 などと相手方に伝え、これ以上の連絡を断念させて被害を未然に防ぐ必要があります。
     なお、国際送金詐欺(ロマンス詐欺)、インターネット・オークション詐欺ともに、「相手方の連絡先は分かっているので、マレーシアの警察に連絡して逮捕の上、商品を取り返して欲しい」という相談が、多数寄せられます。
   当地ではマレーシア国内法規により、被害届は被害者本人が届けることとなっており、在外公館が被害届を代行して届け出ることは出来ません。
   従って、インターネット等による国際交流活動は、常に不良外国人による各種詐欺事件に巻き込まれる可能性があることを強く認識いただくようお願いします。



【3.テロ・爆弾事件発生状況】
 【テロ情勢】
        マレーシア国家警察は、テロ対策の一環としてISIL関係者の摘発を強力に進めるとともに、1月からは軍と共同警戒を国内の各種要衝や観光地で始めるなど、テロ事件の未然防止を図るために全力を尽くしています。
        一方で、最近、テロ容疑で逮捕された者の中にはモスクでの宗教指導者や公務員が含まれるなど、支持者の裾野が確実に広がっていると言わざるを得ない状況です。
   本年3月下旬にはマレーシア国内の7か所で実施された取締活動で、15人のISIL関連被疑者が逮捕されましたが、初めて警察官(女性)が逮捕されるなど、テロ関係者の裾野が拡大していることが窺われます。
   ISILを巡っては、既に70人を越えるマレーシア人が、イラク及びシリアに渡航しての活動に参加していると伝えられているほか、複数の戦闘経験者がマレーシアに帰還しているとみられています。
   一方で、マレーシアには欧米系資本のホテルや飲食店が多数進出しているほか、特にクアラルンプール市内ではショッピングモールやナイトクラブ等、欧米はもとより世界各国からの観光客が多数訪れる施設が多数存在します。
   このことから、仮に外国人観光客を狙ったテロ事件が発生した場合には、在留邦人や邦人旅行者も被害に巻き込まれる可能性が高いと言えます。
   なお、2013年2月以降、テロ関連容疑でマレーシア国家警察に逮捕された者の人数は、177人に上ります(3月末現在)。
 【武装勢力の侵入事案(東マレーシア・サバ州)】
       在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州南東部ラハ・ダトゥ地区周辺では、2013年2月に数百人規模の武装勢力「スールー王国軍」がフィリピン側から侵入し、鎮圧に数か月を要したという事案が発生しました。
   翌2014年6月には、当該勢力と関係を持つとされる者が複数逮捕されており、当該地区には同勢力を支援する者が未だ潜伏している可能性が高いとされています。
   9月末現在、当該地区に対しては、海外安全情報(旧渡航情報)における危険情報のカテゴリー(4段階)のうち、レベル4(退避勧告)に準じる「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を継続発出中です。


【4.誘拐・脅迫事件等発生状況】
 【誘拐事件〜サバ州東海岸部における誘拐事件の発生動向】
   在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州東海岸部では、かねてから身代金目的の拉致・誘拐事件が頻発しており、2014年4月以降、5件の誘拐事件が発生し ています。なお、本年5月に発生した事件については、11月8日にオーナーが解放されたものの、外国人客については同月17日に殺害されています。
       ・2014年4月 
         センポルナ近海(シンガマタ島)外国人旅行者1名、比人従業員1名
       ・2014年5月 
         ラハ・ダトゥ近海(バイキ島)養魚場マネージャー1名
       ・2014年6月 
         クナ近郊(サバン村沿岸)養魚場オーナー1名、比人従業員1名
       ・2014年7月 
        センポルナ近海(マブール島)海上警察官2名(内1名射殺)
       ・2015年5月 
        サンダカン海岸 レストランオーナー1名、外国人客1名
  
      各事件には、フィリピン南部に拠点を置く武装集団が関与しているとされ、リゾート施設や養魚場など海に面した場所で被害者を拉致し、高速ボートでフィリピン南部の島へ連れ去っているということです。
      本事案を巡っては、「犯人の一部が逮捕された」等の報道もされていますが、リーダーの逮捕や武装集団の解明など犯行グループを壊滅するには至っていません。
      これら一連の誘拐事件を受け、サバ州東海域では、2014年7月から夜間航行禁止令が継続して発出されており、禁止時間帯に許可なく同海域を通行する船舶 は警察により逮捕された上、罰金又は勾留が課されています。
      上述のとおり当該地区については、12月末現在、海外安全情報の危険情報カテゴリー3「渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を継続発出中です。

【追記】
   2016年4月1日、サバ州東海岸のセンポルナ沖リギタン島において、8人の武装グループがタグボートを襲撃し、マレーシア人船員4人を誘拐する事件が 発生しました。本件に関してマレーシア国家警察長官が、「フィリピン南部からサバ州東海岸に架けての国境地帯は危険である」と述べています。

 【脅迫事件】
    地元紙の報道等によりますと、ビジネス絡みのトラブルから脅迫事件に発展してしまう事案がしばしば発生しているということです。
      脅迫事件の場合、いわゆるギャングやマフィアが関係する事案が少なくないことから、まずは「他人から妬みを買わない」、「事件に巻きこまれない」ことを念頭に無用のトラブルを避ける事が賢明です。


【5. 対日感情】
     全体的に良好ですが、太平洋戦争勃発や各種戦役等の記念日や、いわゆる南京事件や従軍慰安婦をめぐる報道が行われた際には、これらの記念日・報道等をとらえて各種示威活動を展開する可能性があることを念頭に置く必要があります。


【6. 日本企業の安全に関する諸問題】
    邦人及び現地社員に対する犯罪被害防止対策とともに、他国企業で警備員や社内の者が手引きしたと思われる窃盗事案が発生していることに鑑み、社員及び警備員に関する採用人事や勤務管理等には、特に注意を払う必要があります。


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