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海外安全対策情報(平成28年7月〜9月)

【1.治安情勢概説】
(1)  最近の動向
        マレーシア国内では、夏の観光シーズン中、短期滞在者を中心にすり・置き引き被害が多数発生しました。また、単独又は2人乗りのバイクによるひったくりや 「スマッシュアンドグラブ強盗」(バイクが交通渋滞等で一時停車中の自動車に後方から接近し、追い抜きざまに助手席等の窓ガラスを破壊して助手席や後部座 席の上に置いているバッグ,衣服等を強奪し、そのまま逃走する犯罪手口)の被害も発生しています。
      7月から9月にかけて在留邦人及び短期滞在者が遭遇した事案としては、在留邦人親子に対する強盗事件(レストランで夕食を終えて駐車中の私有 車に戻る途中にスタンガンで襲撃されバッグを強奪、8月下旬)や、繁華街にあるゲストハウス(バックパッカー向けの安宿)に宿泊中の邦人旅行者に対する置 き引き事件・セクハラ事件(合部屋に保管中の荷物から現金や電子機器が盗難:8月中旬、女性宿泊者が従業員からセクハラ被害:9月下旬)などがあります。

(2)  テロ情勢
        6月28日深夜、クアラルンプール郊外プチョン地区で、オープンカフェスタイルのレストランバーで発生した手榴弾投てき事件(8人が重軽傷)について、マ レーシア国家警察は7月に入り、ISIL関係者による初めてのテロ事件であったことを認めました。本事件に関与した者は、8月上旬までに実施された国家警 察による数回の摘発により、全員逮捕されています。
       一方、8月31日の独立記念日直前には、同記念日を捉えたテロ事件を企図していたISIL関係者3人が逮捕され、拳銃や手榴弾が押収されまし た。9月以降も、外国人を含む多数のISIL関係者等が逮捕され、数人は強制送還されています。
    この様な状況下、マレーシア国家警察は、国内主要交通機関や大規模商業施設、観光地等における警察・軍による共同パトロールや検問を行うとともに、ISILをはじめとする各種テロ組織の取締りを進め、関係者の摘発とテロの未然防止に努めています。
      一方で、マレーシア各地の観光地や宗教施設、欧米人が多数集まる大規模商業施設やナイトクラブ等では、テロ事件に遭遇する可能性があることを 認識し、情勢によってはそのような場所に近づかず、また、万一事件に巻き込まれた場合を想定し、脱出経路について事前検討を行うなどのリスクを考慮した行 動を取ることが求められます。

(3)  邦人の皆様へのお願い
       在留邦人及び邦人旅行者の皆様におかれては、外国では言語、法制度、警察組織や犯罪捜査手続など、あらゆる事象が日本と異なること、また、万 が一犯罪に巻き込まれた場合でも、日本の警察が行うようなきめの細かい対応は期待できないことをよくご理解下さい。
       その上で、「犯罪に巻き込まれない」ように注意すること、また、万一犯罪に巻き込まれた場合でも、「身体の安全を第一に行動すること」が出来るよう、心の準備と必要な安全対策を講じて下さい。
    併せて、空港や駅などの交通の要所や外国人観光客が多数集まる名所・旧跡、大規模商業施設では、外国人観光客を狙った銃乱射事件や爆弾テロ事件が発生し、被害に遭遇する可能性が十分あることも念頭に置いて行動して下さい。
   なお、マレーシアでは、現在、政府に批判的な市民団体「Bersih」による汚職追放
デモがマレーシア各地で随時実施されています。一方、これに批判的な市民団体(赤色のTシャツを着用しているため「Red Shirt Rally」と称されています)が、Bersihの活動を妨害しているとの報道が伝えられており、各種混乱が懸念されます。
       Bersihは、11月19日にクアラルンプール市内で最後の集会を開催し、一連の活動を終了するとしていることから、今後、これらの団体の動向には注意が必要です。

【2.一般犯罪・凶悪犯罪の事例・手口】
         ひったくり、置き引き、車上狙いなどの窃盗被害は、在留者や旅行者を問わず発生しており、普段から注意が必要です。
      7月以降に大使館に報告等寄せられた事例
ア 路上強盗(夜間駐車車両までの移動中にスタンガンで襲撃されバッグを強奪)
        8月上旬の午後9時頃、ジョホール市内のレストランで夕食を終えた親子が、レストラン建物脇に駐車していた自動車へ徒歩移動していたところ、背後からスタ ンガンを押し当てられ、たすき掛けにしていたバッグを強奪されました。犯人はバイクで逃走し、盗難被害に遭ったATMカードで現金が引き出されていまし た。
   自動車を路上駐車させる際には、できるだけ明るくて人目に付く場所に駐車するとともに、車に近づく時と乗り降りの瞬間は、周辺への警戒がおろそかになりがちとなることを念頭に置いて、注意を怠らないようにすることが重要です。

イ セクハラ行為(格安宿で女性宿泊客が身体を触られる)
        9月下旬、クアラルンプール市内繁華街のゲストハウス(バックパッカー向けの格安宿)に宿泊していた女性旅行者が、ゲストハウスの男性スタッフから身体を 触られたり卑猥な画像を見せられる等のセクハラ被害を受けたとの報告が寄せられました。
       ゲストハウスは、観光地の直近に低料金で宿泊出来る施設とし国籍を問わず利用する人が多い反面、防犯面やプライバシー面では通常のホテルに遙 かに劣ることは否めないのが実情です。従って,利用に際しては様々なリスクがあることをよく理解する必要があります。。

      凶悪事件の事例
ウ 銃撃事件の発生
      マレーシアでは、1月から7月にかけて銃器を使用した犯罪が散発的に発生し、4人が死亡2人が重傷を負いました。マレーシア国家警察は、銃撃事件に対する 特別捜査班を設置する一方で、事件の発生原因については「特定の動機(怨恨、金銭トラブル等)による」として、テロとは無関係との見方をしています。

エ インターネットを介した各種詐欺
        マレーシアでは、銀行口座や素性が明らかでない携帯電話番号の売買が横行しており、インターネットを介した各種詐欺が頻発しています。
    特に、国際交流サイト等を通じて知り合った外国人からマレーシアの銀行口座への送金を依頼されるケース(「国際送金詐欺」(ロマンス詐欺など)や、イ ンターネットオークションの落札者や入札者を偽装して商品や金銭を騙し取るケースは、日本のみならず欧米各国でも多数の被害者が発生しています。
      当館にも、「相手方の連絡先や口座番号が分かっているので、マレーシアの警察に連絡して逮捕して欲しい」や、「騙し取られた金銭(商品)を取り返して欲しい」という相談が、多数寄せられます。
   残念ながら、当地ではマレーシア国内法規により、被害届は被害者本人が届けることとなっており、在外公館が被害届を代行して届け出ることは出来ません。
    皆様にあっては、電子メールやソーシャルネットワークサービスなど、直接相手方を確認することなく連絡を取り合う関係では、常に「相手の素性は不確か である」というリスクの下に交流をしていることを念頭に置き、むやみに住所や電話番号などの個人情報開示をしないなどの自己防衛策を図ることが大切です。
   以下に、当館でよく取り扱う詐欺事案について紹介します。

1.国際送金詐欺(いわゆる「ロマンス」詐欺など)
        国内外の「国際交流サイト」等で知り合った外国人にそそのかされ、マレーシアやその他の国々へ国際送金してしまう事案は、男女・年齢・季節を問わず多数発 生しています。本件詐欺は、当地欧米大使館でも多数の相談を受けていることを背景に、自国民に対して注意を呼び掛けています。
   典型的な犯罪 例は、架空の異性(男性の場合、欧米系白人で企業コンサルタント、米国軍人、銀行員等を名乗る事が多い)を名乗り、上述したサイト等で被害者を探して架空 のプロフィールに基づくメールを送り付け、数週間から2,3か月程度親しくメールを交換して被害者からの信用を得ようとします。
そして、様々な口実で数十万円程度の送金依頼を行い、被害者が応じると連絡を取らなくなるというものです。
       この種の犯行は、いわゆる「振り込め詐欺」と同様に組織的に行われており、相手方の他に税関職員や宅配業者等、複数の人間が巧妙に役割を分担して送金を 促すケースが少なくありません。従って、交流サイトやSNS等による外国人との交流では、不良外国人による詐欺などのトラブルに巻き込まれる可能性がある ことを強く認識いただくようお願いします。
       また、このような詐欺事件においては、一度送金すると更に高額の送金を要求することもあるため、「金銭の貸借や立て替えを依頼するようなメー ルが届いたら、ただちに連絡を絶つ」といった厳しい態度で臨み、金銭の無心には一切応じないことが肝要です。

2.インターネット・オークション詐欺
        日本国内でネットショップやインターネット・オークションサイトに出品している邦人が、「品物を送付したが代金を支払ってもらえない」、「代金を支払ったのに商品が届かない」等の相談を多数しています。
       商品をだまし取られるケースでは、スマートフォンやデジタルカメラなどの電子機器、貴金属類など容易に換金できるものが狙われています。
    多くの手口では、犯人側は、高額な金額を提示して被害者との直接取引を持ち掛ける、あるいは海外の銀行を偽装した送金受付の文書や電子メールで被害者へ送金したと誤信させ、品物を送らせようとします。
     多くの場合、犯人はEMS(国際スピード郵便)で被害品をマレーシアへ送るよう要求し、EMSの配達状況追跡サービスを悪用して郵便局到着を見計らい、被害品を窓口で直接受け取り逃走している模様です。
     この配送先住所には居住事実がなく、受取時に提示する身分証明書も偽造身分証で人定が判明できないようにしていることがほとんどです。
       したがって、海外との取引に際し、殊更にオークションサイトを通さない直接取引を要求される、銀行口座への入金確認前にも関わらず、あれこれ理由を付けて 「すぐに送って欲しい」等の依頼をうける場合は、ただちに取引を中止するとともに、「これ以上取引を継続する意思はない、必要等あれば警察に相談する」な どと相手方に伝え、これ以上の連絡を断念させて被害を未然に防ぐ必要があります。


【3.テロ・爆弾事件等発生状況】
 【テロ情勢】
        上述のとおり、当地でもISIL関係者に寄るテロ事件が発生し、8人が重軽傷を負う被害が発生しました(6月28日、クアラルンプール郊外)。その後も、 独立記念日を狙ったテロ事件を企図したとして、3人が逮捕されています。
       マレーシア国家警察は、テロ対策の一環としてISIL関係者の摘発を強力に進めるとともに、1月からは軍との共同警戒を国内の各種要衝や観光地で始めるなど、テロ事件の未然防止を図っています。
   マレーシアには欧米系資本のホテルや飲食店が多数進出しているほか、特にクアラルンプール市内ではショッピングモールやナイトクラブ等、欧米はもとより世界各国からの観光客が多数訪れる施設が多数存在します。
   このことから、外国人観光客を狙ったテロ事件が発生した場合には、在留邦人や邦人旅行者も被害に巻き込まれる可能性が高いと言えます。
   なお、2013年2月以降、テロ関連容疑でマレーシア国家警察に逮捕された者の人数は、230人以上に上ります(8月末現在)。
 【武装勢力の侵入事案(東マレーシア・サバ州)】
        在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州南東部ラハ・ダトゥ地区周辺では、2013年2月に数百人規模の武装勢力「スールー王国軍」がフィリピン側から侵入し、鎮圧に数か月を要したという事案が発生しました。
   翌2014年6月には、当該勢力の関係者が複数逮捕され、本年7月下旬には9人に対して終身刑が言い渡されています。
   9月末現在、当該地区に対しては、海外安全情報(旧渡航情報)における危険情報のカテゴリー(4段階)のうち、レベル4(退避勧告)に準じる「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を継続発出中です。


【4.誘拐・脅迫事件等発生状況】
 【誘拐事件〜サバ州東海岸部における誘拐事件の発生動向】
       在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州東海岸部では、かねてから身代金目的の拉致・誘拐事件が頻発しており、2014年4月以降、7件の誘拐 事件が発生しています。なお、本年4月、サバ州東海岸のセンポルナ沖リギタン島において、誘拐されたマレーシア人船員4人については、無事解放されていま す。
       ・2014年4月 
          センポルナ近海(シンガマタ島)外国人旅行者1名、比人従業員1名
       ・2014年5月 
          ラハ・ダトゥ近海(バイキ島)養魚場マネージャー1名
       ・2014年6月 
          クナ近郊(サバン村沿岸)養魚場オーナー1名、比人従業員1名
       ・2014年7月 
          センポルナ近海(マブール島)海上警察官2名(内1名射殺)
       ・2015年5月 
          サンダカン海岸 レストランオーナー1名、客1名
    ・2016年4月 
   センポルナ近海(リギタン島)船員4人
   ・2016年7月 
     ラハ・ダトゥ沖合 船員5人

      各事件には、フィリピン南部に拠点を置く武装集団が関与しているとされ、リゾート施設や養魚場など海に面した場所で被害者を拉致し、高速ボートでフィリピン南部の島へ連れ去っているということです。
      本事案を巡っては、「犯人の一部が逮捕された」等の報道もされていますが、リーダーの逮捕や武装集団の解明など犯行グループを壊滅するには至っていません。
      これら一連の誘拐事件を受け、サバ州東海域では、2014年7月から夜間航行禁止令が継続して発出されており、禁止時間帯に許可なく同海域を通行する船舶 は警察により逮捕された上、罰金又は勾留刑が科されています。
      上述のとおり当該地区については、9月末現在、海外安全情報の危険情報カテゴリー3「渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を継続発出中です。
 【脅迫事件】
      地元紙の報道等によりますと、ビジネス絡みのトラブルから脅迫事件に発展してしまう事案がしばしば発生しているということです。
      脅迫事件の場合、いわゆるギャングやマフィアが関係する事案が少なくないことから、まずは「他人から妬みを買わない」、「事件に巻きこまれない」ことを念頭に無用のトラブルを避けることが賢明です。


【5. 対日感情】
        全体的に良好ですが、第二次世界大戦における各種戦役等の記念日、あるいは、いわゆる南京事件や従軍慰安婦をめぐる報道が行われた際には、これらの記念 日・報道等をとらえて各種示威活動を展開する可能性があることを念頭に置く必要があります。


【6. 日本企業の安全に関する諸問題】
        邦人及び現地社員に対する犯罪被害防止対策とともに、他国企業で警備員や社内の者が手引きしたと思われる窃盗事案が発生していることに鑑み、社員及び警備員に関する採用人事や勤務管理等には、特に注意を払う必要があります。


【7. その他】
【当地におけるジカウイルス感染症をめぐる動向】
     マレーシアでは、9月3日に最初のジカウイルス感染者が判明されて以降、7人の感染が確認されています(10月6日付マレーシア保険省発表に よる)。これを受けて、現在、当地には感染症危険度の「レベル1:十分注意」が発出されています。
  ジカウイルス感染症は、妊娠中又は妊娠予定の女性が感染した場合、母子感染によって胎児に小頭症などの先天性障害を来す可能性があります。また、蚊に刺される以外にも性行為によって感染することがあるため、流行地域に渡航または滞在中の皆様は十分な注意が必要です。
                                                                                                                                                                                以上

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