筑波大学マレーシア校教員特別講義シリーズ~第三回:平石 典子 筑波大学教授・筑波大学マレーシア校教授

令和8年7月30日
7月28日、在マレーシア日本国大使館は、筑波大学マレーシア校と協力し、マラヤ大学マレーシア日本研究センター(MJRC)を会場として、同校所属教員による特別講義シリーズの第三弾となる、平石 典子 筑波大学教授・筑波大学マレーシア校教授による特別講義を開催しました。

第一回及び第二回はいずれも理系分野の講義でしたが、第三回となる今回は、初めて文系分野の講義として、「比較文学」を御専門とする平石先生に御講義をいただきました。

今回の講義では、“Rethinking Japanese Studies from Southeast Asia: Comparison, Dialogue, and Cultural Understanding”をテーマに、東南アジアから日本を研究することは、単に日本研究に地域的な視点を加えることではなく、日本研究においてどのような問いを立て、どのような立場から問うのかを見直す契機となり得ることについて御説明いただきました。


平石先生は、比較文学とは、単に二つの作品を並べて比較することではなく、異なる読者、歴史、社会、言語、文化的記憶が出会うことによって意味が生成される「対話」の方法であると説明されました。講義では、江國香織の短編「メロン」、松本清張『熱い絹』、有栖川有栖『マレー鉄道の謎』、Tan Twan Eng の The Garden of Evening Mists 、インドネシアの女性ヒーロー Sri Asih のWebtoon版などを取り上げ、文学作品、場所、ポップカルチャーが、国や地域を越えた出会いの中で新たな意味を持つ過程について説明されました。

また、東南アジアを軸とした日本研究は、日本を孤立した文化的対象としてではなく、翻訳、移動、対立、共有された歴史の中で捉える「関係的」な研究であるべきこと、研究者や読者自身の前提を問い直す「省察的」な研究であるべきこと、異なる立場からの視点が出会う「対話的」な研究であるべきこと、そして東南アジアを単なる日本文化の受け手や市場としてではなく、日本研究そのものを作り変える知識や文化形式を生み出す場として捉える「生産的」な研究であるべきことが示されました。

質疑応答では、翻訳において失われるニュアンスを比較文学研究でどのように扱うのか、マレーシアの多言語的な文学状況をどのように捉えるのか、また日本とマレーシアのポップカルチャー交流や共同創造をどのように理解できるのか等について意見交換が行われました。

本講義は、マレーシア及び東南アジアという視点から日本研究を捉え直すとともに、日本文学、ポップカルチャー、翻訳、文化的再創造をめぐる理解を深める貴重な機会となりました。

今後の本シリーズに関する情報は、在マレーシア日本国大使館ホームページにおいて引き続き紹介いたします。

第一回特別講義(稲垣 敏之 筑波大学名誉教授・筑波大学マレーシア校チーフ・エグゼクティブ)の様子はこちら

第二回特別講義(辻村 真貴 筑波大学教授・筑波大学マレーシア校学際サイエンス・デザイン専門学群長)の様子はこちら